先日、『古畑任三郎』目当てでFODに入会した記事を書きました。
FODに入会以来、『古畑任三郎』第一シリーズ、第二シリーズ、第三シリーズを見続け、FODで配信されている『古畑任三郎』の作品についてはとりあえずコンプリートしました。
その中で、『古畑任三郎』第2シリーズの「笑わない女」について改めてじっくり見ました。
そこには、日頃より、規則を誰よりも重んじていながら、「化粧をしてはならない」という戒律を破ってしまうミッションスクールの女性教師が登場します。
そして、それを見られたことが犯行のきっかけとなり、同僚の男性教師を殺害してしまうのです。
この「笑わない女」を見ていて、とある漫画のことを思い出したのです。
2020年に亡くなった、漫画家の野間美由紀先生の『パズルゲームハイスクール』にも、
修道院で神に使える立場でありがながら、化粧を諦めきれず、そのことが理由で犯行に加担してしまう女性が登場するのです。
今回その共通点について詳しく書いていきます。ご興味ある方はぜひ読んでくださいね。
※作品のネタバレがありますので、ご注意くださいね。
古畑任三郎の「笑わない女」におけるミスリード
『古畑任三郎』の「笑わない女」は、リアルタイムで見た記憶もあるのですが実は、細かい部分についてはかなり曖昧な記憶しかありませんでした。
沢口靖子演じる宇佐ヨリエが相島一之演じる阿部を殺害した動機について当時バタコは勘違いしていたのです。
放送当時は、宇佐美ヨリエは戒律を遵守するため、教育方針が正反対の阿部を殺害したのだとバタコは思い込んでいたのですが、ラスト、それは全くの勘違いだったということが判明しました。
これが脚本家によるミスリードというものでしょうか。
つまり、視聴者は「そっか、やっぱり戒律を守る宇佐美ヨリエからしたら、阿部のような教師は許せないんだな」と自然に考えてしまいますよね。
けれど、古畑は生徒から没収した口紅が、何故か阿部の部屋にあることを疑問視します。
古畑は、生徒の自由を尊重する教師である阿部の部屋に、なぜ没収した口紅や他の化粧品があるのか疑念を抱くのです。まして阿部は男性教師ですしね。
これは、脚本家の三谷幸喜による見事なミスリードですね。さすがの?バタコもすっかり騙されてしまったのでした。お見事です。
古畑任三郎の「笑ない女」を見ていたらパズルゲームハイスクールを思い出した
この生徒から没収した口紅がクローズアップされてた時、バタコは「似たような女性をどこかで見たことあるな」と思い出したんです。
それは、昨年亡くなられた漫画家の野間美由紀さんの
『パズルゲームハイスクール』16巻に収録されているミステリー作品です(白泉社文庫は8巻収録)
野間美由紀さんは、1980年代から、少女漫画誌に説いてミステリー漫画のパイオニアです。
野間さんは長年にわたり、「パズルゲームハイスクール」という高校生が活躍するミステリー漫画を描き続けていました。
『パズルゲームハイスクール』は1983年から始まり、野間美由紀さんがなくなる2020年まで、40年近くに渡り複数のコミック誌で掲載されており、現在も根強いファンに愛され続けているミステリー漫画です。
アラフォーのバタコは、小学生の時に野間美由紀先生の
『パズルゲームハイスクール』を姉の同級生の家で読み、それ以来、すっかりファンになりました。
『パズルゲームハイスクール』は当初は高校生の香月と大地がミステリー研究会を自分たちで設立し、自分たちの通う高校で起こる事件を次々と解決していく学園ミステリー漫画です。
そして、高校に留まらず、舞台は高校卒業後の主人公たちの活躍も新シリーズとして始まります。
高校卒業後、主人公の香月は将来私立探偵になるために資格取得を目指し、さまざまな専門学校へ通い、大地は大学へ進学します。
そして、事件を解決していくという
『パズルゲームプレステージ』(全4巻)
大地が大学卒業して、探偵事務所を設立する前までの事件解決にふんそうする主人公達を描いた
『パズルゲームトレジャー』(全4冊)
実際に探偵事務所をオープンしプロとして、依頼からの調査を次々と解決していく
『パズルゲームサクシード』(全6巻)
等々それぞれの年齢で難解な事件を見事に解決していく香月、大地を描いているのです
少女漫画はそのほとんどが中高生をターゲットにしていますが、その中高生読者もやがては大人になります。すると、女性はもっと大人向けの漫画を読むようになるので、次第に少女漫画から離れていくのです。
野間美由紀さんの
『パズルゲームハイスクール』はまるでその女性心理を見透かしたかのように、主人公の成長に合わせた漫画を描いているんです。
もちろん、元祖高校生編の
『パズルゲームハイスクール』も登場人物を増やし、
『新パズルゲームハイスクール』(全6冊)としてバージョンアップしているところも流石です。
美しいものに惹かれてしまう女性の心理の共通点
『古畑任三郎』の笑わない女は、化粧をしてはならないという戒律を守りきれずに、生徒から没収した口紅を
衝動的に塗ってしまいます。そしてあろうことか、それを阿部に見られてしまいます。
これが、殺害の動機になります。さらに、阿部が学園を退職することになり、殺害の機会を失ってしまうことを恐れ、沢口靖子演じる宇佐美ヨリエは阿部を殺害するのです。
ラスト、古畑に犯人であることを見破られた時、
「笑わない女」の宇佐美先生は「どうしてあんなにも口紅に惹かれたのかわからない」とつぶやくのです。
古畑は
「それがあなたが女性であるということでしょう」
と答えます。
そのシーンを見て、ふっと思い出したのが野間美由紀さんの
『パズルゲームハイスクール』なんです。
『パズルゲームハイスクール』も1話完結がメインなのですが、その中で、修道院が舞台になる回があります。その修道院では、質素な食事、早寝早起き、労働を基本とし、もちろん化粧は禁止です。
そこに、主人公の香月が修道尼として潜り込んで、修道院を狙う者を探し出し、事件を解決するというエピソードです。
そこにも、『古畑任三郎』の笑わない女と同じように、やはり美しい化粧品を諦めきれないシスターがいるんですね。
香月がこっそり隠し持っていた化粧品を、副院長のシスタークレアは「ここは修道院だから華美なものは相応しくない」という名目で没収したのです。
しかし、没収した化粧品をその副院長であるシスタークレアはなんと自分でこっそり使ってしまっていたのです。
彼女は修道院の中でも院長の次の地位である副院長ですが、実際は、美しいものを諦めきれない女性でした。
そして修道院の財産を狙うアンティークショップの女店主に協力し、その見返りとしてお金を受け取ってしまいます。
そのお金は副院長(シスタークレア)が化粧品を購入するためのものでした。
このシスターもまた『古畑任三郎』の戒律を守る「笑わない女」のように、「私はこの修道院には相応しくありません。美しいものを諦めきれないんです」
とラストに罪を告白します。
この
『パズルゲームハイスクール』の修道院が舞台になっているシリーズは初版1992年1月25日に『パズルゲームハイスクール』16巻に収録されました。(白泉社文庫版は8巻収録)
『古畑任三郎』の笑わない女は1996年1月オンエアです。年代も同じ1990年代、神に仕え、信仰心を大切にするという似通った舞台で、事件が起こります。
戒律もそうですが、あまりにも厳しい規則の中にいるとどうしても息苦しくなってしまうものですよね。
そこにふっと欲望が生まれてしまい、それが悲しいかな犯罪につながってしまう、、、
ミステリー漫画家の野間美由紀さんも、脚本家の三谷幸喜さんも、女性の心理描写をとても丹念に描いているところが共通しています。
戒律を重んじながらも、美しさを諦めきれない女性。どこか憎みきれない哀しさが漂いますね。
まとめ
『古畑任三郎』の笑わない女を見て、思いがけず、自分が好きな漫画
『パズルゲームハイスクール』という作品に共通点があったことを思い出し、備忘録としてこの記事を書きました。
この漫画はバタコがミステリーを好き担ったきっかけとも言える少女漫画かもしれません。
その原点ともなった漫画を『古畑任三郎』の「笑わない女」にでてきた小道具の口紅が思い出させてくれたことに感謝です。
追記
この記事を書いた後、
『古畑任三郎』の『ラスト・ダンス』の双子の入れ替わり殺人という共通点を同じく野間美由紀さんの
『パズルゲームはいすくーる』12巻に収録された『フェイド・アウト』に発見し、詳しい記事にまとめました。
興味のある方はこちらもぜひ読んでみてくださいね。