浜田省吾さんの『悲しみは雪のように』はドラマの主題歌としてミリオンヒットしたので、ご存じの方も多いですよね。
その『悲しみは雪のように』は、実はとある小説(ライトノベル)のタイトルに借用されています。
どんな小説か、ファンじゃなくてもちょっと気になりますよね。
それだけでなく、浜田省吾さんの名曲
- 『片想い』
- 『オン・ザ・ロード』
- 『スウィート・リトル・ダーリン』
など、浜田省吾さんの名曲のいくつかが、やはり同じ作家の小説のタイトルになっています。
中には、浜田省吾さんがその小説のために書き下ろしたたオリジナルソングが登場する作品もあります。
今回は、小説のタイトルや物語に登場する浜田省吾さんの名曲について詳しく書きました。興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。
※作品のネタバレがあるため、ご注意をお願いします。
浜田省吾の曲が登場する小説
ロックアーティストの浜田省吾さんの曲が登場するのは、
倉橋燿子さんのライトノベルです。倉橋さんは、『夜カフェ』、『青い天使』などのジュニア小説を多数執筆している児童文学作家です。倉橋さんは近年では『聲の形』のノベライズにも携わっています。
浜田省吾さんの曲が登場する小説として代表的な作品は、
『風を道しるべに…』です。
浜田省吾さんと倉橋燿子さんは、長年親交があり、それが縁で倉橋燿子さんの小説に登場します。
特にこの
『風を道しるべに…』では、浜田省吾さんがこの小説のために作詞した曲『風を道しるべに』が物語の登場人物が歌う曲の歌詞として登場します。
以前『ミステリという勿れ』の記事にも書きましたが、『風を道しるべに…」の比呂志という青年はロックミュージシャンを目指しています。
その比呂志になりかわって浜田省吾さんが作詞したこの小説のオリジナルソングです。
物語の中で、比呂志が作詞作曲した曲としてオリジナルソングの『風を道しるべに』が歌われ、歌詞も全て掲載されています。
風の噂によると(ダジャレじゃないです)
当時浜田省吾さんは『風を道しるべに』の歌詞だけでなく曲も作ってくれていていつか映画化になったら使えるように準備してくれていたそうです。
残念ながら、映画化には至っていませんが、もし本当に実写化されていたらどんな曲なのかぜひ聴いてみたいですね。
こちらはKindleでも読めますので、気になる方は、浜田省吾さんの歌詞が登場する7巻だけでも読んでみることをおすすめします。
浜田省吾さんが倉橋燿子さんの小説のために書き下ろした歌が物語中に登場するという非常に価値ある一冊です。
ちなみに
『風を道しるべに‥』は当初はティーンズハートで10巻で完結となっていました。
この小説の後、倉橋燿子さんはバタコの青春時代のバイブルにもなった
『さようならこんにちは』という長編小説に取り掛かっていました。
その
『さようならこんにちは』を執筆中に、
読者から『風を道しるべに‥』の続編を望むファンレターが想像以上にたくさん届いたのだそうです。
倉橋燿子さんはその声に応えて
『続・風を道しるべに』を執筆するはこびとなったのです。
さらに
『風を道しるべに‥完結編』も出版されて長きに渡った小説のラストを迎えたのでした。
倉橋さんは、読者からのお手紙をきちんと読み、そしてその声にこたえてくれる作家です。
バタコとしては以前別の記事に書いたように
『さようならこんにちは』が個人的に大好きな作品です。
『さようなら こんにちは』は10代の頃に図書館で全て読んだのですが、40代に入ってまたフツフツと読みたい気持ちが湧いてきました。
けれど、残念ながら絶版になっており、電子書籍にもありませんでした。その為ネットで中古の紙版を全巻大人買いしました。
30年近くたって、文庫本自体は少し色褪せているけれど、主人公の明日香はやはり生き生きと輝いています。
明日香を含め、大好きな物語の登場人物達にまた会うことが出来て本当に嬉しく思います。
一昔前なら絶版のものは諦めなければならなかったけれど、インターネットのおかげで、10代の頃に読んだ懐かしのライトノベルに出会えることは幸せだと感じています。
浜田省吾の曲・詞が掲載されている小説の三部作について
倉橋燿子さんのデビュー作である
『スウィート・リトル・ダーリン』のタイトルは、倉橋さんが親交のある浜田省吾さんの曲と詞を拝借して出版されました。
タイトルだけでなく、物語の終わりに浜田省吾さんの『スウィート・リトルダーリン』の歌詞も載っています。
上記の3冊は『AZとかおるシリーズ』の三部作です。どの小説もタイトルと同じ浜田省吾さんの曲の歌詞が小説の最後に掲載されています。
当時、倉橋燿子さんの小説を読んでいた世代の方には懐かしい思い出となっているのではないでしょうか。
悲しみは雪のように (講談社X文庫―ティーンズハート)読者のリクエストによって小説のタイトルになった浜田省吾の曲『片想い』
上記の三部作が出たことによって、浜田省吾さんの
『片想い』という曲をモチーフにした物語を書いてほしいという読書からのリクエストが倉橋燿子さんのもとにたくさん届いたのだそうです。
倉橋さんがそれを受けて執筆したのが、
『BYE2片想い』という小説です。
読者のリクエストに応えて執筆に取り掛かったものの、当時は昔の自分の片想いのことを思い出してしまうところもあって、執筆中は倉橋さんもずいぶん悲しい思いが込み上げたようです。
その倉橋さんの昔の片想いのエピソードがかなり詳しくあとがきに書かれているのですが、その内容を読んでバタコまで胸が苦しくなってしまいました。
思わず、「ああ、男の人って本当に、、、もう!優しすぎるぜベイベー(死語?)こんちくしょうめっ」と叫びたくなるくらいです。
と、同時に曲の作者である浜田省吾さんも、やりきれない片想いの経験があるのかなあなんて、ふと考えてみたりしました。
でも、せつない片想いの経験がない人なんていないはず、、、
だからこそ、この
『片想い』という曲がたくさんの人を惹きつけ、小説のタイトルにもリクエストされたんでしょうね。
浜田省吾さんの『丘の上の愛』が登場する小説
浜田省吾さんの曲が登場する小説をもう1冊ご紹介します。
『ジェミニの涙』(2004年)という河合祥さんの小説です。
主人公は進学校に通う女子高校生なのですが、複雑な家庭環境下にあります。
母親は宗教に全財産をつぎ込んで蒸発、そのことが原因で父親は病気になり仕事を失い、主人公は放課後に自ら街角に立って男性を買い生活費を稼いでいます。
そしてそのバイトのことが学校に知られてしまい、退学に追い込まれます。
ある日、主人公は元同級生の男の子からCDを渡されます。
それは、
『Sand Castle』というタイトルのアルバム。
そして、歌詞カードの
『丘の上の愛』という曲の部分にマークがつけてあったのです。
主人公は浜田省吾を知らないのですが、ひとりの夜に繰り返し
丘の上の愛』を聴きます。
そして、男の子がなぜそのCDを自分にくれた理由を察するのです。
そしてある事情で二人は離れることに、、、
その主人公が終幕までずっと大切に持っていたのが、男の子がプレゼントしてくれた
『丘の上の愛』が収録されている
『Sand Castle』というアルバムだったということがが、ラストに明かされます。
この
『丘の上の愛』と世界観がリンクしています。
作者の河合さんは浜田省吾さんの曲をモチーフにこの物語を書いたのでしょうね。
バタコも聞いてみたのですが
『丘の上の愛』は愛はお金で買えるのかということを問いかけています。
浜田省吾さんのファンの間では一番好きな曲としてこの
『丘の上の愛』を挙げる人も少なくないようです。
愛をお金で買うことが普遍的なテーマであるからこそ、この曲が多くの人の心に響くのかもしれませんね。
愛をお金で買うことについて
ちなみに、愛をお金で買えるかということについて扱った作品は、バタコが読んできた漫画の中にもいくつか登場します。
矢沢あいの
『NANA』の19巻で、レイラが
『あたしは愛をお金で買うような女だ』と言うセリフがあります。
たしかに、最初はレイラはシンの愛をお金で買ったのです。
けれど、シンもレイラのことを愛するようになり、シンはレイラからお金を受け取るのはやめて、結果として2人は恋人関係になります。
けれど、きっかけが一番最初にレイラがお金で愛を買ったことだったので、そのことが徐々に二人を苦しめていくのです。
お金から始まる愛は継続が難しいということでしょうか。
『親なるもの断崖』という漫画でもヒロインの女性を財力のある男性が身請けして、借金を肩代わりして夫婦になったストーリーが描かれています。
しかし、そのことで村人達から凄まじい迫害を受けます。そしてとうとうその手は幼い娘にも及び、、、ゆえに自分の娘を守るために主人公は姿を消すのです。
同じようなエピソードは、以前バタコが書いた記事に少し登場した橋田壽賀子の『おしん』にも出てきます。
やはり、周囲の反対がものすごくて、結果、別れてしまう小作の夫婦がいます。
愛にはさまざまな形がありますが、少なくとも物語の世界の中で、お金で買った愛は破綻の道を辿るケースが定石のように感じます。
一夜の愛をお金で買うことはできても、それを継続させることは難しいのでしょうね。
『デザイナー』や『有閑倶楽部』で有名な一条ゆかりさんの
『正しい恋愛のススメ』という漫画は、出張ホストをテーマにしています。
主人公は同級生から頼まれ、愛情をお金で売る出張ホストのピンチヒッターを引き受けます。
最初は戸惑いつつも、「彼氏をレンタルする」女性の気持ちに寄り添うようになり、主人公はエスコートするためのスキルアップとしてワインセミナーや英会話の勉強などにも励むようになります
主人公はバイトとして出逢った年上の女性と出会い、二人は惹かれ合うようになるのです。
ウエンツ瑛士出演でドラマ化もされています。ご参考までに、、、
結局、
『正しい恋愛のススメ』でも、主人公は出張ホストとして出逢った玲子と別れてしまいました。
愛をお金で買ったカップルは長続きしないように思われますが、
同じ一条ゆかりさんの
『プライド』という作品があるのですが、こちらはそのセオリーとは一線を画しています。
『プライド』の主人公はレコード会社の社長からパトロンとして結婚を申し込まれます。
実は、この社長は主人公に一目惚れして自分のものにしたいと思い、あえて結婚という名のパトロンを申し出たのです。
社長のパトロンという申し出に、最初は戸惑う主人公ですが、オペラ歌手になりたいという小さい頃からの夢を叶えるために社長にお金を出してもらいウィーンへ留学を決意するのです。
なお、主人公はピアニストを目指している音大生と心を通わせていました。けれど紆余曲折を経てこのパトロンを愛するようになり、主人公と社長は結ばれるラストになっています。
結果として社長は主人公の愛をお金で買うことができたのです。(言葉にすると身も蓋もありませんが)
そういう意味でも、この
『プライド』は一条ゆかりさんの作品において新しい世界観を生み出した作品と言えるかもしれません。
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まとめ
今回は、浜田省吾さんの曲が登場する小説を中心に詳しく書きました。ご紹介した作品に興味のある方は、ぜひ一度チェックしてみてくださいね。